私立中学校受験を考えているご家庭で悩みのひとつにあることは、受験校の選択だと思います。大学受験の有無や将来のことを考えると慎重な対応が必要です。
今回は、私立中学校の中でも「大学附属校」と「進学校」の違いと人気のある大学附属校の内部進学状況を説明します。この記事を読んで受験校選択の参考にして下さい。
【私立中学校受験!大学附属校と進学校の特徴と違い!】
中学受験で志望校を決定するときには、各ご家庭の考え方によって様々な理由が考えられます。ここでは、私立中学校の中でも大学附属校と進学校の違いを簡単に説明します。
また、第一志望だけでなく併願校の選択も重要なことになります。併願校の選択に関しても、基本的な部分を説明していきます。
私立中学校の受験校選択の基本!
私立中学校受験で志望校を選ぶときは、大きく考えて3つの選択肢を考えなくてはなりません。
「公立と私立の選択」
「性別による選択」
「進学を考えた選択」
の3つを順番に考える必要があります。
- 公立と私立の選択
以前の中学受験と言えば、私立中学校受験のことをいいました。近年は、公立中高一貫校の増加に合わせて受験者数も多くなっています。
今回は、公立中高一貫校と私立中高一貫校の違いや特徴には触れません。同じ中高一貫校でも全く異なる部分も多いので選択には慎重な対応が必要です。
- 性別による選択
私立中学校は、「男子校」「女子校」「共学校」「男女別学」などの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットが存在します。
私立中学校の多くは、個性的な校風と独自の教育理念が存在します。性別面で学校を選ぶときは、特に校風や教育理念に注意をする必要があります。
- 大学進学を考えた選択
私立中学の受験を決めたご家庭の中には、既に大学進学を視野にいれているケースも少なくありません。大学附属校と進学校の選択が必要になります。
私立中学校の大学附属校と進学校では、大学受験に関する考え方が基本的に異なります。選び方次第で進学する大学だけでなく大学受験の有無にも影響してきます。
私立中学校受験!私立大学附属校と私立進学校の違いと特徴!
私立中学校の中でも私立大学附属校と私立進学校の違いを簡単に説明しておきます。今回の主旨でもある大学附属校の内部進学に関する知識にも関連するので理解してほしいと思います。
大学附属校は、併設高校の卒業後に推薦枠を使用して併設大学に進学するタイプが多くなっています。進学校は、基本的に大学受験を経て大学進学をするタイプが一般的です。
基本的に大学附属校は、大学受験対策に対して積極的とは言えません。やはり自校の併設大学が基本なので当然と言えば当然の考え方です。
ただし、大学附属校でも必ず併設大学に進学をしているわけではありません。いくつかの進路パターンがあるので簡単に説明をしておきます。
- 併設大学への希望者は基本的に併設大学に進学できるタイプ
大学附属校の魅力を最大限に活用できる中学受験がこのタイプの附属校への進学です。併設高校を卒業後は、原則併設大学への進学が可能なタイプの中学校になります。
併設大学の中でも学部や学科に関しては、100%希望がかなうとは言えません。あくまでも内部進学者の中でも成績の優秀な生徒から希望学部にすすめる学校が多いようです。
このタイプの附属校の問題点は、仮に国公立や他の私立大学への受験を考えたときに難しくなることも少なくありません。
国公立大学受験に関しては、事前に認めている学校も少なくありません。他の同等レベルの大学への受験は基本的に考えていないのが本音です。
どちらにしても、根本的に大学受験対策を考えていない教育方針なので、中学受験の段階で将来国公立進学を目指しているご家庭は避けるのもひとつの考え方になります。
- 併設大学へ多くの希望者が進学できるが一般とは異なる試験が必要なタイプ
基本的に大学附属校をなのっているものの規模が大きな学校になると全ての希望者が併設大学に進学できないケースもあります。
特に附属高校が全国にあるような学校の場合は、あきらかに卒業生の方が多くなってしまいます。従って附属であっても独自の入試試験が必要な学校も少なくありません。
後ほど大学附属校のところでも内部進学率の説明をしますが、学校説明会や学校のホームページで進学実績を確認することをオススメします。
- 併設大学への進学を希望しない生徒が多いが併設大学への進学も可能なタイプ
多くの卒業生が併設高校の卒業後に他大学を受験するタイプの大学附属校です。名称こそ「○○大学附属」となっていますが、多くの生徒が他大学に進学します。
特に近年では、進学校と変わらないくらいの難関私立大学や国公立大学への合格者も輩出しているので「中堅校」と共に注目されています。
偏差値やブランドよりもお子さんにあった学校選びが基本!
私立中学校受験で一番大切な受験校の選び方を間違えている親御さんも少なくありません。今回は、大学附属校を中心に説明しますがお子さんの性格によって受験校を選択する必要があります。
また、全ての受験生が第一志望校に入学できないのも中学受験の厳しいところです。その場合は、地元の公立中学校か私立併願校に進学をすることになります。
親御さんが注意をする必要があるのは、併願校の選び方になります。お子さんが例え通学することになっても楽しんで通える学校を受験しなくてはなりません。
ここで間違えやすいのが、「偏差値」「ブランド」による併願校選びになります。以下の様な受験校選びと間違いの理由を説明しておきます。
・パターンA
第一志望校: 大学附属校 偏差値65
併願校: 進学校 偏差値60
・パターンB
第一志望: 進学校 偏差値60
併願校: 大学附属校 偏差値55
・パターンC
第一志望: 大学附属校 偏差値70
併願校: 同系大学附属校 偏差値68
パターンAとパターンBのケースは、志望校の「ブレ」が問題になります。大学附属校と進学校では校風や教育理念が全く違います。
第一志望と同じ校風の学校を併願校として選択するのが望ましいと考えられます。パターンCは、同じ大学附属校ですが、同系で偏差値が近い場合は、更に安全校を受験するべきです。
特に一部の大学附属校は、全体的に偏差値も高く人気があるので、全校受験をすると併願校をじゅけんするのが難しくなります。後半になればなるほど激戦になるので注意が必要です。
【私立大学附属校と私立進学校の進学状況】
私立大学附属校と私立進学校の基本的な違いを説明したので、ここからは大学附属校の進学状況を説明していきます。大学附属でも様々な傾向があります。
難関私立大学附属校の進学状況と特徴
大学附属校と言っても全部の大学を掲載するのも大変です。一応、「早慶GMARCH」と呼ばれる大学附属校をとりあげてみました。
それぞれの学校の共学・別学等と内部進学率を約○%や○名というスタイルで表記しています。数字は毎年変動しますが、目安として認識してください。
★早稲田大学系列
・早稲田実業学校(東京) 共学 約98%
・早稲田大学高等学院(東京) 男子 約99%
・早稲田(東京) 男子 46.3%
・早稲田摂陵(大阪) 共学 約40名
・早稲田佐賀(佐賀) 共学 約50%
・早稲田大学本庄高等学院(埼玉) 共学 約99%
早稲田大学系列の中で系列学校として筆頭になるのが、「早稲田大学高等学院」です。早稲田大学本庄高等学院は高校しかありません。
「早稲田」は、早稲田系列の中でも進学校としても実力があります。約半数は内部進学ですが、残りの生徒は難関国公立大学への進学が多くなっています。
「早稲田摂陵」「早稲田佐賀」は、早稲田大学への推薦枠が他の系列に比べると少なくなっています。もちろん一般入試よりは敷居は低く見えますが、大学附属校としては少ない内部進学率だと思います。
★慶應義塾大学系列
・慶應義塾普通部(神奈川) 男子 約98%
・慶應義塾湘南藤沢(神奈川) 共学 約98%
・慶應義塾中等部(東京) 共学 約97%
慶應義塾中等部は、慶應義塾女子と慶應義塾に男女がわかれて進学します。進学率は、双方の平均と考えてください。
慶應義塾志木(埼玉県) 男子が高校としてあります。内部進学率は、約98%となっています。
慶應義塾は、早稲田大学系列以上に「附属校」としての人気ブランド校になっています。中には、「幼稚舎」や「初等部」から一貫して慶應義塾というご家庭も少なくありません。
★学習院大学系列
・学習院(東京) 男子 約48%
・学習院女子(東京) 女子 約61%
学習院大学系列は、大学附属校としては、比較的内部進学者が少ない傾向があります。併設大学への進学状況は、より上位大学への受験者が目立ちます。
主な進学先は、「学習院」は国公立を含め早稲田・慶應・上智が多くなっています。一方、学習院女子は、早稲田・慶應・上智などの私立難関大学への受験者が多くなります。
★明治大学系列
・明治大学附属明治(東京) 共学 約88%
・明治大学付属中野八王子(東京) 共学 約84%
・明治大学付属中野(東京) 男子 約82%
明治大学系列は全て中高一貫校ですが、明治の直属系列は「明治大学明治」のみとなっています。以前は、内部進学率に差がありましたが、かなり中野系も高くなりました。
内部進学者以外の生徒は、難関国公立や難関私立大学への進学者が多くなっています。明治大学は大学の中でも人気が高いので、中学受験時の偏差値も年々上昇傾向になります。
★青山学院大学系列
・青山学院(東京) 共学 約79%
・青山学院横浜英和(神奈川) 共学 不明
純粋な青山学院系は、「青山学院」のみです。青山学院横浜英和は、元々女子校だった横浜英和を系属校としたときに共学化にした学校です。
青山学院横浜英和から青山大学への推薦枠は、皆無でしたが2016年以降の入学者に関しては、規定以上の希望者は推薦枠が発生することになっています。
★立教大学系列
・立教池袋(東京) 男子 約86%
・立教新座(埼玉) 男子 約77%
・立教女学院(東京) 女子 約60%
・香蘭女学校(東京) 女子 約50%
立教大学の直属系列は、「立教池袋」「立教新座」の2校です。この2校は、内部進学者以外は、上位大学への進学が多くなります。
系属校の「立教女学院」「香蘭女学校」は、内部進学を望んでも推薦枠が得られないケースもあります。
★中央大学系列
・中央大学付属(東京) 共学 約83%
・中央大学付属横浜(神奈川) 共学 約72%
・中央大学(東京) 共学 約86%
・中央大学杉並(東京) 共学 約92%
中央大学のうち「中央大学」「中央大学杉並」は高校のみの学校となっています。「中央大学付属」と「中央大学付属横浜」は、2010年に誕生した中校一貫校です。
中央大学付属系列も比較的併設大学へ進学するのは、高校のみの系列校です。約80%が併設大学に進学しているのですから、大学付属校として文句はありません。
他大学への受験も国公立であれば、積極的に認めているようです。中学受験時の第一志望校以外に難関大学付属校の併願校にもなりやすい学校です。
★法政大学系列
・法政大学(東京) 共学 約82%
・法政大学第二(神奈川) 共学 約85%
元々は「法政大学」「法政大学第二」共に男子校でした。共学になってから女子の難易度も高くなっています。
全体の約80%以上が併設大学へ進学していますが、高校時代の成績がある程度求められるので自動的に併設大学に進学できるわけではありません。
ただ、外部受験で法政大学に入学をすることを考えれば中学受験の偏差値を考えれば受験価値は高いといえます。
その他の首都圏私立大学附属校の進学状況
その他の大学付属校に関しても簡単に紹介しておきます。「日本大学」や「東海大学」のような全国に学校のある付属校と名称だけでほとんど併設大学に進学しない学校を掲載しておきます。
- 日本大学
全国に中学高校のある日本大学付属系列には、「正附属」「特別附属」「準附属」があります。日大への内部進学率は、中学入試の偏差値でもある程度区分けされています。
併設大学への進学率は、約79%~約27%と同じ日本大学系列でも幅が広くなっています。中学受験前にあらかじめ調べておくことを強くオススメします。
「正附属」の見分け方は、校名が「日本大学+地名」になっています。
例)日本大学藤沢・日本大学豊山など。
「特別附属」は、後ろに漢数字が入っています。
例)日本大学第一・日本大学第二・日本大学第三など
「準附属」は、別法人で「地名+日本大学」となっています。
例)土浦日本大学・長崎日本大学・長野日本大学など
- 東海大学
・東海大学附属高輪台(東京) 共学 約84%
・東海大学附属相模(神奈川) 共学 約74%
・東海大学附属浦安(千葉) 共学 約73%
・東海大学付属菅生(東京) 共学 約24%
東海大学は、「高輪台」「相模」「浦安」は直系ですが、「菅生」は系列校になります。併設大学へ進学しない生徒の多くは他の私立大学へ進学しています。
- ほとんど併設大学に進学しない中学校
併設の大学があっても多くは他の上位大学への受験を選択する中高一貫校も少なくありません。「帝京大学」「東京電機大学」「フェリス女学院」などは特に内部進学率が少ないです。
- 開成と桜蔭の進学状況は?
大学附属校だけで見ているとわかりにくいので、首都圏進学校の頂点とも言える「開成」「桜蔭」の進路状況をみてみます。
開成は、東大をはじめ難関国公立への現役進学者が多数いますが、早稲田大学と慶應義塾大学の合格者も各100名以上の合格者を輩出しています。
その中でも進学者が10%程度となるとあくまでも併願校だったことが予想されます。ちなみに現役でGMARCHになるとあきらかに受験者数も少なくなっています。
桜蔭も女子校ながら東大や難関国公立大学、私立大学医学部への合格者が多くなっています。早稲田・慶應といったレベルの大学にも多数の合格者を輩出しています。
保護者が疑問に思う大学附属校の進学について!
保護者の方が最も疑問に感じている部分が内部進学率だけではわからない部分だと思います。生徒が併設大学への進学を希望したときに本当に希望通りになるのでしょうか?
結論から言えば、一般入試に比べるとはるかに進学がしやすい環境ですが、絶対ではないと自覚する必要があります。
日頃の学校生活や定期テストをはじめとした成績が一定以上の生徒に推薦資格が発生するのが一般的です。つまり成績が悪い生徒や欠席や授業態度に問題があると厳しくなります。
その他に近年だと「英検」「小論文」など特定の資格や試験をおこなう併設大学もあります。
学部に関しても成績が良い生徒が優先されるのは言うまでもありません。
【まとめ】
今回は大学付属校に関する内部進学率や進学校との違いを説明しました。大学附属といっても学校によって内部進学率は様々なことが理解できたと思います。
また大学附属校に入学したといっても必ず併設大学に推薦で進学できるとは限らないと覚えておくことも必要です。
進学校は大学受験があるから大学付属校を希望するご家庭も少なくありません。ただし、大学付属校でも入学がゴールではないこともわかっていただけたと思います。